社会に対し生きづらさを抱えていた主人公ハンスの人生。「車輪の下」のエピローグに隠されたヘッセの思いを考察!

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こんにちは、misakiです。


今回ご紹介するのは、ヘッセの「車輪の下」

とても繊細で心の優しい少年ハンスが、
自分の心の性質と社会との間で上手く器用に生きることが出来ず、
もがき苦しむ様が克明に描かれています。


現代でも、「生きにくさ」というのは一つのテーマであり、
生きにくさを抱えた人達にとってほんの小さな道標でも、
すがりたくなることがあると思います。


それは、私自身、そういうタイプだから、そう思うのですが…。

同じような方がたくさんいるからこそ、
「生きにくさ」に対する書籍や動画などが
多く溢れるようになったのかなと思います。


「車輪の下」ヘッセの半生を下に書かれた作品です。

ヘッセもまた、生きにくさを感じ、もがきながら生きてきたのでしょう。


ライトノベルの主人公達の一定数も、
上手く現実に馴染めないタイプがいますよね。

彼らは異世界へ行って自分の居場所を見つけたり、
ヒロインと出会って成長したり、
何らかの形で自分を受け入れ乗り越えていくことが多いです。


それでは、「車輪の下」主人公ハンスはどうなのでしょう?


娯楽小説のようにカタルシスを約束されているわけではない、
そんな「車輪の下」の主人公を、
ヘッセがどのように描いたのか…

探っていきたいと思います。

あらすじ紹介

僕は、どうやら村で一番勉強が出来たらしい。父さんと牧師さんに勧められて、僕たち小市民の生まれとしては超エリートコースの神学校を受験することになる。期待されることは嬉しくて、好きだった釣りも自然の中の散歩も辞めて勉強に打ち込む日々。お陰で僕は神学校の受験に合格した!けれど、村を離れて都会の神学校へ入学すると、そこでは思いもよらぬ出来事が、僕を待ち受けていた……

ハンスは、心根が優しくて、頭も良い少年です。

ですが、残念ながら父親は全く別のタイプでした。


ですから、ハンスの本当の心の性質には気が付かず、
勉強が出来るというところだけを見て、我が子を称え、
自分の息子は村一番出来の良い子だと鼻高になります。

ハンスには母親が居ませんでしたので、
そんなふうに自分を褒めてくれる父親が嬉しいあまり、
自分を押し込めて父の為にさらに頑張っていきます。


これって、親子関係としては、現実でもありがちな図式です。

もしかしたら、自分もそうだったなと思い当たる節のある方もいるかもしれません。


そうして何とかハンスは神学校へ入学するのですが、
規則正しく個性を認めない体制に苦しみを感じ、中々学校に馴染めません。

そのことから、原因不明の不調に悩まされ、
勉強に集中できないということが起こります。

さらに、とある少年との出会いをきっかけにして、
ハンスは完全に勉強への意味を見失い、詩や芸術の世界へ惹かれていきました。


これもまた、現代でもありがちなことではないでしょうか。

学校までは卒業しても、仕事のシーンでは
まだまだ自分らしさを完全に押し込めなければならない場面が多かったりしますよね。

そういうことが長く続くと、
その度合いや限度は人それぞれですが、体や心に不調が現れ、
その生活を送ることが困難になっていきます。


そして、ハンスの場合はついに神学校を諦め、
退学して村へ帰ることになりました。


そんな息子に対して父親は悩みます。

幸いだったのはそれでも父親が息子を愛していたことでしょう。

色々と思うことはあれど、父親の方がリアリストでした。

もう、神童と言われた息子の影を追うのを止め、
むしろハンスよりひと足早く現実を見据え始めます。

ただ…結局はやはり、
息子の本当の気持ちを理解することは出来なかったのですが…


父親には父親なりの、人間らしい苦悩が見て取れるのです。


不器用ではあっても、最低の親ではない。


ここに、作者ヘッセとその家族との関係が現れているように感じました。


「車輪の下」は、自伝的作品といわれるように、
ヘッセの若かりし頃をかなり忠実な下敷きにして作品に昇華されています。


では、主人公ハンス作者ヘッセとは、どこまで同じでどこが違うのでしょう?


そこを、次の項目で見ていきたいと思います。

ヘッセについて


ヘルマン・ヘッセというと、国語の教科書にも載っていますよね。


生まれは1877年、日本は丁度文明開化の明治10年の頃、南ドイツで生まれました。


彼の生まれた小さな町を、
後年のヘッセ自身「自分の知っている中で一番美しい町」だと語っています。

森の丘の間を澄んだ川が静かに流れる景色。

それはまるで、少年ハンスの生まれ育った町の景色とかぶって見えるようです。


「車輪の下」以外の著書においても、
その町と思われる景色が各所に登場するのは、
それだけヘッセにとって故郷の町が大切で思い出深い場所だったからなのでしょう。


さらに「車輪の下」との共通点を見ていきます。

彼の家族ですが、ヘッセの父、そして祖父は新教の牧師でした。

ですから、ヘッセ自身生まれた時から牧師になることが決まっていました。


神学校を経て大学へ行き神学を修め、牧師になる。

けれどその完全に決められていたコースを、ヘッセは踏み外します

なんとか神学校へ入学したヘッセは僅かその半年後に退学しました。

いえ、正確に言うと、彼は寄宿舎を逃げ出したのです。


発作的な行動だったので連れ戻されますが、
それをきっかけにノイローゼと不眠症に悩まされ、結局は退学をします。


保養地で牧師の元に預けられますが、
そこでピストルを手に入れ自ら命を断とうと画策したことで、
再び別の牧師の元へ送られることになりました。


その後別の高校へ転入学することができましたが、
そこでもまた同じようにピストルを買っています。

再び退学、今度は本屋で今でいうアルバイトを始めますが
3日で連絡なしに辞めてしまいます。


ともすると、主人公のハンス以上の苦悩と絶望を、
ヘッセの半生から想像することは難くないだろうと思います。


けれども、そんなハンスとヘッセの一番の違い。

それは、母親の存在でした。


苦しむヘッセの為に、母親は心配し一心に祈り続けました。

けれどもそんな母親が、病気の為に身体を悪くしてしまいます。

苦しむ母親を見ていたヘッセは、
これ以上自分の為に母親が苦しんでいる様子を見ていたくないと、
町工場の見習工になる決意をしました。

肉体労働をしながら、それ以外の時間を読書や詩作にあてていきます。


そうして、1年数カ月後、
新聞の広告を見て再び別の店の書店員として就職し、
本を売りながら自費出版で自分の本を出すようになりました。


「車輪の下」は、
そんなヘッセの小説や詩が売れるようになり、
結婚をして田舎での生活を始めてから発表されました。

花が咲いたのは27歳。

混迷を極めた青春時代を思うと、
そこから駆け上がるのは早かった印象を受けます。


ここでようやく「車輪の下」を書いたというのは、
ヘッセの中で青春時代の自分自身を真っ直ぐに見つめるだけの心の余裕
生まれたからなのかもしれません。


ヘッセを投影した主人公ハンスは、
ヘッセの青春時代と共に幕を下ろしたのでしょう。

実際に読んでみた感想


私が初めて「車輪の下」を読んだのは高校3年生の時でした。

私自身もドロップアウトを体験した身である為に、
主人公ハンスを他人事のようには思えず、
自分を重ねて見てしまうことも多々ありました。


なぜ、現実世界というのはこんなにも生きにくいのだろう、と、
不思議に思って、随分考えたこともあります笑


「車輪の下」は一見とても暗く憂鬱な話のように思いますが、

  • ヘッセの自伝的作品であること
  • ヘッセが作家への成功の後に書かれている作品であること

などから、暗いだけではなく、
ヘッセの強い意志やメッセージを感じることができるのではないかと思います。


一度エリートへと進みかけてドロップアウトした彼は、
工場で働くことにプライドが傷付けられたような感覚を覚えます。

けれどもそこで働くことで、
ヘッセもハンスも人間的にひとつ成長し、心の健康を取り戻していきます。


また「車輪の下」のエピローグ、
ハンスが川に落ちてしまうシーンに関しては、
単なる悲劇ではなく


ヘッセが自分の過去を弔い、慰めるような思いで書いたのかもしれない、
と思うと、

それは絶望ではなく、優しさなのではないか、
と思わずにはいられません。


過去の自分に対して、
もう自分は大丈夫、ゆっくりおやすみというような、
そんな気持ちだったのではないでしょうか。

もちろん、私はヘッセではないので、
推測することしかできないのですが、
そんなふうに思えて仕方ありませんでした。


苦しみの中でもがいている人にこそ、読んで欲しい作品です。

そして、読み手によっては絶望を感じることがあるかもしれませんが、
それだけではないんだということも、知ってほしいなと思いました。

まとめ


今回はヘルマン・ヘッセの「車輪の下」を紹介させて頂きました。


「車輪の下」は、

  • ヘッセの自伝的作品
  • 繊細で心優しい少年の苦悩が描かれている
  • 生きづらさを抱えている人なら共感するところがたくさんある
  • メタ的に見ると単なるバッドエンドではない
  • 自然の美しさを感じる


この5つがポイントになります。


「車輪の下」は、ヘッセの人生と共に読んで欲しい作品です。


有名な作品なので、色々な出版社から翻訳も多数出ていると思います。

読みやすいなと思った物を選んで、ぜひ手に取って見てください。

それでは、今回もここまで読んで下さって、ありがとうございました。

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